●馬の歯は |
前歯が上下6本ずつ、奥歯が上下6本ずつ奥歯が左右上下に6本ずつ合わせて36本が並び、牡馬の場合はこれに犬歯が加わって全部で40本である。歯並びを見ると歯が生えていない部分がある。この部分を歯槽間縁と呼び、ここにハミを噛ませる。こうした歯並びは馬特有なもの。
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●ハミの役割 |
ハミ歯槽間縁の部分に噛ませると、歯にぶつかることなく舌の上に収まって、口の開け閉めにも、物を食べるのにも邪魔にならない。しかもハミの両端があたる口角は最も感覚が敏感な部分だ。だから、ハミの両端に手綱を取りつければ、微妙な手綱の動きも確実に感じ取らせることができる。
ハミを最初に用いたのは、紀元前1500年前後に中央アジアを席巻したヒッタイト人というこであるが、馬と人間とのつきあいの上で、実に重要な発案であった。
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●馬の瞳 |
人間の場合、瞳孔は円形だが、馬の場合、瞳孔は横長である。横長の瞳孔は縦方向の視野を制限される替わりに、横方向にはより広い視野をもつ。しかも馬の目は顔の左右についていて、これも視野を広げるのに役立っている。
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●視野は350度 |
馬の視野は350度にも及び、頭の真後ろの部分を除いて、グルリと周りを見渡すことができる。
特に後方で動く物影に対して敏感に反応する習性があるが、これは後方から忍び寄る外敵にいち早
く気づいて逃げるためで、草食動物が生きるための本能なのだ。がレースではこうした機能が災いし
て、走りに集中できない場合もある。遮眼革を使って後方や横の視野を遮り、他馬の姿が見えなくな
ると、馬は安心して走りに集中する。
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●夜でも見える |
馬の目は暗がりでもピカピカと光る。つまり暗闇でも目が見えるのだ。だから昼夜にわたって放牧すれば、夜の暗がりにあっても馬は支障なく活動している。ナイター競馬のまばゆい照明は、人間のためにこそ必要なもので、馬にとってはさほど必要ではない。
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●日本の馬齢と
欧米の馬齢 |
日本でではもともと数え年で年齢を表していたわけで、馬に限らず人間も同様に、生まれて1歳、明けて2歳、その後も正月のたびに1つずつ年を増やしていくのが普通だった。人間の方は戦後になって、西洋式に満年齢の数え方をとるようになったが、馬の年齢は長らく数え年のままだった。しかし平成13年1月から、馬の年齢も国際基準に従って満年齢で数えるようになった。
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従来の日本の馬齢 |
欧米の馬齢 |
変更後 |
生まれた年 |
当歳(1歳) |
foul |
当歳(0歳) |
翌年1月1日 |
2歳 |
yearlings(1歳) |
1歳 |
2年後1月1日 |
3歳 |
2years |
2歳 |
3年後1月1日 |
4歳 |
3years |
3歳 |
4年後1月1日 |
5歳 |
4years |
4歳 |
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●馬の成長と馬齢 |
馬の平均年齢は20〜25歳。一般的に馬の実質的な年齢は、「数え年書ける」といわれている。つまり、当歳は人間でいうと4歳、12歳でデビューして、古馬となる数え年5歳は20歳に相当するわけである。その後も単純に「欠ける」で考えると、数え年20歳の馬は80歳に相当するが、この年齢でも種馬生活を続けている馬が少なくないことから、しっくり子ない感もある。それで、数え年9歳以下は「×4」、10代は「×3」、20代では「×2.5」、30代では「×2」として換算する...という見解もある。
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●朝食・夕食 |
厩舎で与えられる競走馬の食事には1日3回。朝食は8〜9時ごろ、調教を終えて、シャンプーを済ませてから与えられる。次の食事は午後4時ごろ。この2回はいずれも飼い葉を食べさせる。
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●飼い葉の内容 |
馬は草食動物だから、本来は主に草を食べる。が、競走馬は激しい運動をするので、青草や干し草(粗飼料)だけでは栄養不足。それで、栄養価が高く消化しやすい麦類や豆類など(濃厚飼料)も合わせて与えられる。一般的な飼い葉の内容は、燕麦(カラス麦の改良種)、ふすま(小麦の皮)、干し草、青草など。その他、ニンジンやリンゴ、豆類、油カス、ニンニク、ハチミツ、角砂糖、塩などが適度に加えられ、場合によってはビタミン剤、カルシウム剤、ミネラル剤などが添加されることもある。1日の摂取量は12〜15kgほど。水は1日に20〜40リットルも飲む。
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●馬の好物 |
馬は甘いものが大好きである。ニンジンやリンゴを好むのも甘味だからで、ハチミツや角砂糖なども大好物。但し、甘い物の摂りすぎは糖尿病の原因になる。また、放牧されている馬はゆっくりと移動しながら少しずつ草を食むが、好んで食べるのは丈の低い柔らかい草。イネ科の牧草ではチモシーやケンタッキーブルーグラス、マメ科の牧草ならクローバーやアルファルファなど。どちらかというと、マメ科の牧草の方が好むようである。その他、野草ならササやチガヤ、ツユクサなどを好んで食べる。
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●睡眠時間は4時間 |
馬は立ったままでウトウトと眠るのが普通だが、疲れたときなどは脚を投げ出して横になったり、脚を折ってうずくまったりして眠る。特にレースに出走した日は疲れるので、横になって高いびきで眠っていたりする。平均睡眠時間は3〜4時間程度だ。
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●馬も夢をみる |
人間と同様に、馬も夢を見るようである。眠っているときに不意にいなないたりすることもある。
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●心臓の大きさ |
激しい運動をすると心臓がドキドキ、呼吸がハァハァする。これは運動によって消費される酸素の量が増えたため。つまり走るためには十分な酸素の供給が必要なのだ。体内に酸素を運ぶのは血液で、血液を送り出すのが心臓。だから心臓の機能は走る能力と密着に関係する。ちなみに人間の心臓は250〜300グラム程度で、体重の0.4〜0.5%の重さ。サラブレッドの心臓は4〜5kgと大きく、体重比は約1%をしめる。同じ馬であっても速度を要求されないペルシュロンの心臓は体重比0.6%程度だし、運動量の少ない牛などは0.35%と小さい。
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●トレーニングの効果 |
鍛えられたスポーツ選手の心臓は普通の人よりも大きいことが知られているが、馬の心臓も調教や競走によって大きくなる。長く競走を続けている馬の心臓は平均4.8sで、短期競走生活では4.3s、競走していない馬は4.1sという調査結果が出ている。また長期休養をとった馬の心臓は平均4.2sで、つまり鍛錬する前の大きさに戻っていることがわかる。休養馬が復帰するのに十分な調教が必要な理由はこうしたところにもある。
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●コズんだ馬の血液 |
コズミを起こした馬の血液を調べると、赤血球の著しい増加認められる。これは血液が異常に濃くなった状態で、こうなると血液の流れが滞って、血行不良となり、代謝の能率が悪くなる。すると筋肉の中にたまった疲労物質(乳酸)を解消することができないため、筋肉の柔軟性がなくなり、痛みが出てくる。
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●血液濃縮のメカニズム |
血液が濃くなるのは過激な運動の後遺症と考えられる。厳しい調教やレースで疾走するとき、馬は多量のエネルギーを燃焼させて筋肉を動かしている。つまり体内に蓄えられた栄養素を分解してエネルギーに変えるのだが、このときに多量の酸素を必要とするので、その適応として血液中の赤血球(酸素の運搬約)んじょ数を増加させるわけ。また、激しい運動によって上昇する体温を下げるため、馬は大量な汗をかく。このため血液中の水分が失われることも、血液の濃縮につながる。
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●コズミの原因 |
栄養素の分解には酸素が必要だが、運動が激しくなると酸素の供給が追いつかず、無酸素状態で
の分解が進む。すると分解過程で排出される老廃物を処理しきれず、それが乳酸となって筋肉や血液中に蓄積する。蓄積した乳酸は、その後、血液の浄化作用によって解消されるのだが、その血液が濃縮状態になって循環が鈍ると、乳酸の解消も進まず、コズミとなって筋肉痛を引き起こすわけだ。ちなみに笹針は、この濃縮した血液を直接取り除き、造血作用を活性化させ、新鮮な血液の流れを促進する。 |
●耳の動き |
馬の耳は竹を斜めに切ったような形をしていて、
耳が開いている方向の音を選択的に聞き取るようにできている。
しかも馬の耳はクルクルとよく動く。
これは、馬の耳が10種類もの筋肉に支えられていることによる。
そのお陰で、前後左右と自由に耳の向きを変えることができるため、
立体的に音を聞き取っている。
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●耳による自己表現 |
また、機敏に動く耳は音を聞くだけではなく、気持ちを雄弁に表現する。耳の動きから、ある程度、馬の心理を推し量ることができるいくつ例をあげますと...
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●耳を前に向ける |
平静な精神状態。
それで何かをじっと見るのは関心を引かれているとき。
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●耳を前と後ろに動かす |
一方を前に、他方を後ろに向け、
それを互い違いに動かす時は、怒りを感じている。
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●耳をクルクル動かす |
左右の耳を違う方向に動かし、
視線が定まらず、低いいななくのは不安な心理状態。
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●耳を後ろにしぼっている |
敵意や警戒心を示している。
さらに歯をむくのは威嚇の表情。
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●気分がいいとき |
高い声で長くいななくのは、うれしいとき。
尾を高く振り、軽やかに歩く。
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●驚いたとき |
鼻の穴を大きく膨らまし、鼻嵐を吹いたりして、荒い息を吐く。
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●威嚇している表情 |
耳を後ろにしぼって、口を突き出し、
歯をむき出して、攻撃的な表情をする。
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●蹴ろうとしているしぐさ |
耳をしぼり、頭を下げ、尾を巻いて後ろ脚をこごめたり、
尻を向けたりする。
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●エサがほしいときの前がき |
前脚で地面をかくような仕草をする。
前がきは疝通のときなどにも見せる。
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●信頼している人に甘える |
目を細めて、頭や鼻面をすり寄せる。
パドックで若馬がときどき見せるしぐさ。
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●耳をしぼる |
耳をピタリと後ろに倒すしぐさ。
馬は走りに余裕があるときには耳を立てている。
が、後続馬に迫られた逃げ馬など、余裕がなくなると耳をしぼる。
またゴール前で追われれば、耳をしぼって必死に頑張る。
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