馬の生物学的特徴
生物学的特徴
首と頭が長く、長い四肢をもつ。角はない。各脚とも第3指を残し他の指は退化している。よく発達した爪(ひづめ)をもち、硬い土の上を走ることができる。長い尾と、頭から首の上部にかけての鬣(たてがみ)を除くと、全身の毛は短いが、ある程度の寒冷地での生活にも耐えられる。優れた嗅覚をもつが、毒草や血のにおいなどを嗅ぎ分けることはできない。顔の両側に目が位置するため視野が広いが、反面、両眼視できる範囲は狭いため、距離感をつかむことは苦手とする。走るときに背中が湾曲しないため、乗用に用いることができる。
草食性であり、よく発達した門歯と臼歯で食べ物を噛み切り、すりつぶす。ウマは後腸発酵動物であり、反芻動物とは異なり胃は一つしかもたない。しかし大腸のうち盲腸がきわめて長く(約1.2m)、結腸も発達している。これらの消化管において、微生物が繊維質を発酵分解する。胆嚢がないことも草食に適している。
寿命は約25年、繁殖可能な年齢は3-15/18歳。繁殖期は春で、妊娠期間は335日。単子であることが多い。
牡(オス)馬は歯をむき出しにして、あたかも笑っているような表情を見せることがある。これを「フレーメン」と呼び、ウマだけでなく様々な哺乳類に見られる。このフレーメンによって鼻腔の内側にあるヤコプソン器官(鋤鼻器)と呼ばれるフェロモンを感じる嗅覚器官を空気にさらすことで、発情した牝(メス)馬のフェロモンをよく嗅ぎ取れるようにしている。発情した牝馬の生殖器の臭いをかがせるとこの現象を容易に起こせるため、ウマのフレーメンに関する歴史的エピソードがいくつかある。また、ウマはレモンなどのきつい匂いをかいだときにもフレーメンをし、牝馬もフレーメンをすることがある。
馬の毛色
毛色
毛色と特徴 03
馬の毛色(うまのけいろ)は、馬の体の色、模様のことで、鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、栗毛、栃栗毛、尾花栗毛、芦毛(鹿毛芦毛、栗毛芦毛)、青毛、佐目毛、河原毛、粕毛、月毛(パロミノ)、アパルーサ、白毛、粕鹿毛等がある。本来野生動物であった馬は、元々単一の毛色を持っていたと考えられ、アジアに生息していた野生馬は全て鹿毛であったが、馬が家畜化された頃より毛色に対する淘汰圧が下がり、変異が蓄積されることで様々な毛色ができていった。毛色によって競走能力等特性、性格等に有意な差は生じないが、野生状態では天敵から、戦場では敵軍から見つけられる確率は毛色によって変わる。また、馬によっては交配相手に特定の毛色を好む場合もある。サラブレッドにおいては鹿毛、栗毛、黒鹿毛、芦毛、青鹿毛の順に多い。栃栗毛、青毛はまれで、白毛、粕鹿毛も極めてまれに認められる。
各毛色の特徴
鹿毛
- 最も一般的な毛色で、鹿の毛のように茶褐色で、タテガミ・尾・足首に黒い毛が混じる。
- サラブレッドでは約半数を占める。
栗毛
- 全身が褐色の毛で覆われている。サラブレッドでは鹿毛の次に多く、約24%を占める。
- また、栗毛の両親からは栗毛の仔しか生まれない。
黒鹿毛
- 黒みがかった鹿毛。サラブレッドでは鹿毛、栗毛についで多く、約14%を占める。
芦毛
- 灰色の毛色。サラブレッドでは約7%を占める。生まれたときは灰色や黒、もしくは母親と同じ毛色であったりするが、年を重ねるにつれ白くなっていく。また、競走能力には影響はない。
- 高齢になると、芦毛ゆえの黒色腫と呼ばれる腫瘍(人間で言うところの、皮膚癌(ひふがん)に当たる)の発症率が高くなることが知られている。この腫瘍は基本的には良性だが、悪性化し死亡に至ることもある。シービークロスは、これを発症し死亡。オグリキャップは、発症するも手術成功の甲斐が有り救われた。
- 芦毛は白馬として珍重されたが、この特殊な癌の発症率が高いことや、軍馬としては敵に見つかりやすい等の弱点のためサラブレッドでは排斥された歴史もあり、20世紀初頭には殆ど見られなくなっていた。その後ザテトラークとその父ロアエロド等の活躍により勢力を回復したため、サラブレッドにおいては殆ど全ての芦毛馬がロアエロドを祖としている。血統書で可能な限り遡ると、オルコックアラビアン、又はブラウンローアタークまで遡ることができる。
青鹿毛
- サラブレッドでは2-3%を占める。黒鹿毛より黒く全身ほとんど黒色、鼻先や臀部など部分的にわずかに褐色が見られる事もある。
青毛
- 全身真っ黒の最も黒い毛色。季節により毛先が褐色を帯び青鹿毛に近くなることがある。個体数が少なくサラブレッドでの出現頻度は1%以下で、白毛、月毛等を除けば最も少数派である。シーザリオ等がいる。
栃栗毛
- サラブレッドでの出現頻度は1%以下で、青毛の次に少ない。両親ともに栃栗毛の場合子も必ず栃栗毛になる。栗毛よりもやや暗い毛色で、鹿毛にかなり近い場合もある。長毛は一般的に薄い色だが濃い色の個体もあり、鹿毛に近い場合は、脚も茶色になっていることから区別が付く。(鹿毛は脚の毛が黒い)。サッカーボーイ等がいる。
尾花栗毛
- 尾花栗毛とは、栗毛馬のうちタテガミ、尻尾が金色のものをこう呼ぶ。一般的に見栄えがよいとされる。登録上栗毛との区別はない。トウショウファルコ等がいる。
白毛
- 全身の白い毛と肌が特徴で、出現率は非常に稀。日本ではサラブレッドと同系種、アングロアラブを合わせても過去16頭(突然変異6頭、遺伝10頭)が生まれているのみで、世界に目を向けてもこれまでに数十頭しか生まれていない程貴重な毛色。このため競馬場などでもめったにお目にかかれず、伝説の毛色とまで言われることもある。よく誤解されることだが、白毛はアルビノではない。いくらかの色素を持ち、目は青色、毛にも有色毛が混じることがある。さらに、白毛は優性遺伝であるが、アルビノは劣性遺伝であり遺伝方式も異なる。また、白毛馬は虚弱傾向が強く出るといわれ、大成しないとされている(ただしサンプルが少なく結論は出ていない)。日本では、大井競馬でハクホウクンが初勝利を挙げるまで白毛の勝ち馬は現れていなかった。なお海外では活躍例があり、1922年のプール・デッセ・デ・プーラン(仏1000ギニー)勝ち馬モントブランク(モンブラン)は白毛説が強い(登録上は栗毛)。また1963年生まれのモントブランク(前述の馬と同名、こちらは登録も白毛)はステークスに勝利し繁殖牝馬としても白毛を僅かながら広めた。
- 1896年アメリカで生まれたホワイトクロスが記録上初めての例で、この馬は両親が栗毛と青毛である。これは両親どちらかが芦毛でないと生まれない芦毛とは大きく違い、突然変異によって生まれることを示している。日本のハクタイユーや、シラユキヒメも両親ともに白毛ではなく突然変異によって生まれている。また、両親どちらかが白毛でも生まれることがあり、日本最初の白毛馬ハクタイユーはミサワボタン等これまでに5頭の白毛馬を輩出している。
- 同じく白い芦毛馬との相違点は、芦毛の肌は黒くその上に白い毛が生えているのに対し、白毛馬はピンク色の肌に白い毛が生えているのである。また、芦毛は生まれたときは灰色や黒、もしくは母親と同じ毛色であったりするが、白毛は生まれたときから全身が真っ白である。
佐目毛
- 全身が真っ白か象牙色。北海道和種にまれに見られる程度で稀少。吉兆とされ、
- 神社に奉納されることもあった。
河原毛
- 体は淡い黄褐色か亜麻色で四肢の下部と長毛は黒い。北海道和種等にみられる。
月毛
- 月毛(つきげ、Palomino、Isabel、en、de)
- 淡いクリーム色で、写真はドイツ語版にある。サラブレッドには基本的に存在しない毛色とされていたが、近年アメリカ、ドイツ等で認められた。これらは何れも1966年に突然変異の結果生まれたミルキー(Milkie)の血を受け継ぐものである。勢力を増しており、河原毛や佐目毛、さらには白毛馬と交配されて白毛と月毛のまだら模様の馬も生まれているが、乗馬目的での生産が主であり競馬で好成績を残したものはまだない。その他、上杉謙信の愛馬、放生月毛等が有名。
- Sato(英語 月毛のサラブレッドで、しかもぶち毛まで持っている)
- [1](Thoroughbred Pedigree Database、マジカルゴールドダストとその祖先の写真、白毛馬(w)と月毛馬(pal)を多く持っている)
ぶち毛
- 体に大きな白斑のあるもの。原色毛によって栗駁毛、鹿駁毛、青駁毛と表記され、白斑が体の多くを占めるとき駁栗毛、駁鹿毛、駁青毛という。
アパルーサ
- アパルーサ(Appaloosa、en、de、nl、pl、sv)
- アルパーサという品種の持つ毛色、独特の斑点、まだら模様が特徴。
ペイントホース
- ペイントホースという品種の持つ毛色。
粕毛
- 原毛色の地に、肩や頸、下肢等に白い刺毛が混生する。原色毛によって栗粕毛、鹿粕毛、青粕毛と表記することもある。加齢によって刺毛は増加するが、芦毛と違い白くはならない。
ベンドア班
- ベンドア斑点(バードキャッチャー斑点)は、鹿毛や芦毛等の地に白や黒の斑点を持つ毛色でサラブレッドでごくまれに出現する。原色毛によって粕鹿毛、粕芦毛等とも表記される。過去日本では粕鹿毛としてマスミノルが登録された例があるほか、海外ではパンタルーン、ベンドア、ストックウェル、ザテトラーク、ムムタズマハル、バードキャッチャー、サーハーキュリーズなどが代表格である。遺伝法則は不明だが上記の馬は全て血縁関係にあり、何らかの遺伝子が関与しているものと思われる。
遺伝法則
ここから遺伝法則について述べる。
白毛
白毛遺伝子: Wは他の全ての遺伝子の働きを抑えるため、白毛遺伝子を持つと、他の遺伝子が何なのかに関わらず全て白毛になる。白毛は突然変異によっても生じることがあり、この場合にはwがWに変異していると考えられる。白毛遺伝子は致死遺伝子で、ホモ接合型WWになるとその個体は胎児のうちに死亡する。このため白毛同士の配合は危険で、両親共に白毛のミサワボタンの例は貴重である。
芦毛
色素を体毛から除く作用のある芦毛遺伝子: Gは、白毛遺伝子以外の全ての遺伝子の働きを抑えるため、芦毛遺伝子を持つ個体は、白毛遺伝子を持っていなければ全て芦毛になる。芦毛が生まれるには、親のどちらかが芦毛である必要がある。また、稀に芦毛遺伝子がホモ接合型GGになっているホモ芦毛と呼ばれる馬がおり、日本輸入のメンデスなどがそれである。
ぶち毛
ぶち毛遺伝子: TOを持つと原色毛の上に白のまだら模様が描かれる。両親どちらかがぶち毛を持っていないと生まれない。
粕毛
肩や頸、下肢等に白い刺毛を混生させる粕毛遺伝子: RNを持つと粕毛になる。両親どちらかが粕毛でないと生まれない。
鹿毛系
体毛を黒くする作用がある鹿毛遺伝子: Eは、対立遺伝子である栗毛遺伝子: eに対して優性である。従って遺伝子型がEEあるいはEeであれば、鹿毛系(鹿毛もしくは黒鹿毛・青鹿毛・青毛・河原毛等)の毛色となる。鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、青毛のどの毛色になるかは、アグーチ遺伝子: Aと鹿毛遺伝子を弱める遺伝子Pにより決まる。(下記表参考)
栗毛系
栗毛遺伝子: eは対立遺伝子である鹿毛遺伝子: Eに対して劣性で、栗毛遺伝子がホモ接合型eeになった場合のみ、栗毛系(栗毛もしくは栃栗毛・月毛等)の毛色となる。このため栗毛系同士の配合では必ず栗毛系の産駒が生まれる。栗毛と栃栗毛の差はアグーチ遺伝子による。アグーチ遺伝子を持つと栗毛となり、持たないと栃栗毛になる。月毛は別の遺伝子が関わってくる。
佐目毛系
佐目毛遺伝子: Ccrは体色を薄くする。この遺伝子がホモ接合型CcrCcrとなっている場合は佐目毛となり、ヘテロ接合型CcrCとなっている場合は河原毛か月毛となる。ヘテロ接合型でかつ鹿毛遺伝子を持つCcrCE- の場合は河原毛となり、栗毛遺伝子を持つCcrCeeの場合は月毛になる。サラブレッドのほとんどはこの遺伝子を失いCCになっているため、月毛・河原毛・佐目毛が出ない。
毛色の遺伝子型と表現型
それぞれの毛色の遺伝子は以下の表に示すとおりであるが、栗毛の両親からは本来生まれないはずの鹿毛が生まれたりと、まだ充分に解明されていない点もある。以下の分類にも一部異説があり、今後の研究により覆される可能性がある。さらに国や研究者によっても分類の仕方に違いがあり、以下の表には従わないことがある(国によっては黒鹿毛と青鹿毛を区別しなかったり、逆にさらに細分化されていたりする)。
- 表の見方
- WやG等の大文字は白毛・芦毛等の形質を発現する優性遺伝子を表し、wやg等の小文字はそれらに対し劣性の対立遺伝子を表す。
- 優性・劣性どちらの遺伝子が入っても、発現する毛色に影響を与えない場合は"-"で表している。
- "・"は、この遺伝子の働きが他の遺伝子によって抑えられる、あるいは隠されることを示す。
- 例)白毛遺伝子Wと芦毛遺伝子G
- Wは他のすべての遺伝子の働きを抑える(抑制遺伝子)ため、Ww(ヘテロ接合型)は白毛になる。ただしWは致死遺伝子で、WW(ホモ接合型)になると、その個体は胎児のうちに死亡する。Wは他の全ての遺伝子の働きを抑制するため、他の遺伝子は"・"と示される。
- 白毛遺伝子Wを持たないと他の遺伝子が働き、別の毛色になる。例えば、白毛遺伝子Wを持たず芦毛遺伝子Gを持つと、その個体は芦毛になる。この場合、芦毛遺伝子がホモ接合型GGであってもヘテロ接合型Ggであっても個体は芦毛になるため、表では"G-"と示される。
白 |
芦 |
薄 |
駁 |
黒 |
弱 |
限 |
粕 |
表現型 |
WW |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
(胎児のうちに死亡) |
Ww |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
白毛 |
ww |
G- |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
芦毛 |
ww |
gg |
CcrCcr |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
(佐目毛) |
ww |
gg |
CCcr |
toto |
E- |
・ |
・ |
rnrn |
(河原毛) |
ww |
gg |
CCcr |
toto |
ee |
・ |
・ |
rnrn |
(月毛) |
ww |
gg |
CC |
toto |
E- |
P- |
A- |
rnrn |
鹿毛 |
ww |
gg |
CC |
toto |
E- |
P- |
aa |
rnrn |
黒鹿毛 |
ww |
gg |
CC |
toto |
E- |
pp |
A- |
rnrn |
青鹿毛 |
ww |
gg |
CC |
toto |
E- |
pp |
aa |
rnrn |
青毛 |
ww |
gg |
CC |
toto |
ee |
・ |
A- |
rnrn |
栗毛 |
ww |
gg |
CC |
toto |
ee |
・ |
aa |
rnrn |
栃栗毛 |
ww |
gg |
CC |
toto |
ee |
・ |
・ |
RN- |
(栗粕毛 Red Rorn) |
ww |
gg |
CC |
toto |
E- |
P- |
・ |
RN- |
(鹿粕毛 Bay Rorn) |
ww |
gg |
CC |
toto |
E- |
pp |
・ |
RN- |
(青粕毛 Black Rorn) |
ww |
gg |
CCcr |
toto |
E- |
・ |
・ |
RN- |
(河原毛 + 粕毛 Buckskin Roan) |
ww |
gg |
CCcr |
toto |
ee |
・ |
・ |
RN- |
(月毛 + 粕毛 Palomino Roan) |
ww |
gg |
CC |
TO- |
・ |
・ |
・ |
・ |
(+ 駁毛) |
- Pは色素粒子の構造を変え、色を薄くする。
- Aはアグーチ遺伝子のこと。多くのほ乳類が持っている遺伝子の1つ。メラニン色素の合成を促進するMSHホルモンを拮抗阻害し結果的に体色を薄くする。ただし体の端部ではこの働きは弱く、馬ではタテガミ・尾・足首などで黒い色が残る。
白斑
毛色の他に個体の識別に使われるものとして白斑がある。白斑は主に頭部、脚部などに見られれる白い毛の事で、毛色やその他の特徴(旋毛等)と合わせると無数の組み合わせがあり、個体識別に利用する事ができる。そのため血統登録の際記載が義務づけられている。代表的なものに、頭部では星・曲星・流星・環星・乱星・唇白・白面・鼻白・鼻梁白・作、肢部では白・半白・小白・微白・長白・細長白・長半白等がある。なお、白斑に至らない程度のものを刺毛という。(en:Horse
markings参照)
旋毛
馬のつむじのことを旋毛(せんもう)という。位置に個体差があることから、白斑と同じく個体識別に利用する事ができる。位置によって「珠目」、「華粧」といった名称がある。
進化
ウマ科は主要な系統の化石証拠が豊富であり、そこからその進化史が跡付けられている。最古の化石は、北米で5,000万年前(始新世)の地層から発見されたヒラコテリウム
Hyracotherium sp.である。ヒラコテリウムは、一般にはエオヒップス Eohippus という別名で知られる。ヒラコテリウムはキツネほどの大きさで、前肢は第1指がなく、後肢は第1と第5指が退化している。森林に生息し、葉食性(ブラウザ)であったと考えられている。
その後、始新世のオロヒップス、エピヒップス、漸新世のメソヒップス、ミオヒップス、中新世のパラヒップス、メリキップスという系統進化が明らかになっている。約1,000万年前(中新世前-中期)のメリキップスは、真の草食性を示す高冠歯を獲得したことと、より高速での走行を可能にした下肢骨(尺骨と橈骨、脛骨と腓骨)の癒合の2点で画期的であった。当時は乾燥気候が広がるとともに大草原が拡大しつつあり、メリキップスの出現は、草原への進出の結果だった。
約400万年前(中新世中-後期)のプリオヒップスは、第2・第4指を完全に消失させることで指が1本になり、現在のウマに近い形態をしていた。ウマの仲間は、更新世の氷河期にベーリング海を渡り、ユーラシア大陸やアフリカ大陸に到達し、現在のウマであるエクウス(ウマ属)に分化する。
南北アメリカ大陸に残ったウマ科の動物は、氷河期に絶滅した。ミオヒップスやメリキップスからも多様な種分化が起こり、ウマ類は一時、大きな発展を示したが、系統の大半はすでに絶滅し、現存する子孫が、ウマ、シマウマ、ロバの仲間のみとなっている現状は、反芻類の繁栄と対照的である。
ウマ類は反芻類に比べ、植物を消化してタンパク質に再構成する能力が劣っているため、反芻類に駆逐されたものと考えられているが、ウマは高い運動能力を獲得することで生き残った。野生のウマはほとんど絶滅に近いが、内燃機関が発明されるまでの長い間、人類にとって最もポピュラーな陸上の移動・運搬手段となることで、家畜動物として繁栄した。
毛色と特徴 03
ウマ(馬)
ウマ科の動物の馬(ウマ)について説明しています。
ウマ(馬)は、ウマ目(奇蹄目) ウマ科に属する動物の総称。現生は、いずれもウマ属に属するウマ、シマウマ、ロバの仲間、5亜属9種のみである。狭義の「ウマ」は、このうち特に種としてのウマ
Equus caballus のみを指す。
社会性の強い動物で、野生のものも家畜も群れをなす傾向がある。北アメリカ大陸原産とされるが、北米の野生種は、数千年前に絶滅している。欧州南東部にいたタルバンが家畜化したという説もある。
古くから中央アジア、中東、北アフリカなどで家畜として飼われ、主に乗用や運搬、農耕などの使役用に用いられるほか、食用もされ、日本では馬肉を桜肉と称する。
学名の Equus はインド・ヨーロッパ語でウマを意味する ekwos に、種小名の caballus は中央アジア-スラブ-フィンランド語系でウマを意味する kaval に由来する。日本語の「ウマ」は、モンゴル語の morin に由来するという説があるが、「梅(うめ)」などと同様、直接的には「馬」という漢字の字音(マ)によると考えるのが妥当であろう。
なお、道路交通法上、馬が引く車および人の騎乗した馬は軽車両に分類される。
なお、日本語で馬の鳴くのを特に「いななく」(動詞)ということがあり、古くは「いばゆ」(下二段動詞)といったことがある。馬は凶暴という噂があるがそんなことない。
分類 |
界: |
動物界 Animalia |
門: |
脊索動物門 Chordata |
亜門: |
脊椎動物亜門 Vertebrata |
綱: |
哺乳綱 Mammalia |
目: |
ウマ目(奇蹄目) Perissodactyla |
科: |
ウマ型亜科 Hippomorpha |
科: |
ウマ上科 Equoidea |
科: |
ウマ科 Equidae |
属: |
ウマ属 Equus |
種: |
caballus |
|
学名 |
Equus caballus
|
和名 |
ウマ
|
英名 |
Horse
|
目次
[ 馬 ]
- 1 生物学的特徴
- 1.1 毛色
- 1.2 白斑
- 1.3 旋毛
- 1.4 進化
- 2 品種
- 2.1 野生種
- 2.2 軽種
- 2.3 中間種
- 2.4 重種
- 2.5 ポニー
- 2.6 在来種
- 3 人間とウマ
- 3.1 人間によるウマ利用の歴史
- 3.2 食用
- 3.3 乳用
- 3.4 民間医療薬として
- 3.5 尾毛
- 3.6 伝承・民話・神話
- 3.7 ウマの登場する諺、故事成語、慣用句、四字熟語など
- 3.8 楽曲
- 3.9 映画
- 3.10 TV
- 3.11 ドキュメンタリー
- 3.12 小説
- 3.13 キャラクター
- 3.14 その他
- 4 軍用馬
- 5 警察馬
- 6 関連項目
- 7 外部リンク
- index
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