【 馬の管理 】【 乗馬と馬 】| 馬

馬の管理は人間の管理に通ずる

ある騎手養成の訓練所の話である。

　沢山の騎手志望の新人を厳しく教育している一人の教官がこう云った。馬に上手に乗ることは馬を上手に管理することだ、馬を上手に管理することは簡単なようで非常に難しいことだ。

　多くの人は、乗馬を単に身体を動かすスポーツだと考えているかもしれないが、どれだけ上手に身体を動かすことが出来ても馬に上手に乗ることは中々出来ない。いろいろのスポーツの選手をやってきたから馬にも上手に乗れると言うものではない。

　馬を上手に管理することは大変に難しく、頭をうんと使わないと出来ないのだ。即ち、上手な乗馬には頭を使わなければならないと言うことだ。身体だけでは馬は動いてくれない。

　 しかし、大概のものは身体だけで馬は動いてくれると考えている。頭を使わないと乗馬は出来ないと言うことを知っているものは殆どいないのだ。また、馬の管理は人間の管理と同じなのだ。馬に上手に乗れる人は人間の管理も上手に出来る人だ。

　人間の管理には当然頭が必要だ、馬の管理にも頭が必要なのだ。人間の管理とは人と人との付き合いだ。人と人との付き合いが上手に出来ないものは人と馬との付き合いも出来ないのだ。

　騎手になりたいと云って訓練所に入ってくる若者が多いが、その殆どのものは乗馬は人間とは別の動物の馬を乗りこなすものだと思って入ってくるが、中々上手に乗馬が出来なくて途中で止めて行くものが多い。

　それは、馬に乗ることは馬を管理することだと言うこと、そして馬を管理することは人間の管理、即ち人と人ととの付き合いを上手にすることと同じだと言うことを心得ていないからだ。

　中には、｢自分は人と人との関係が煩わしくて、人嫌いになったから馬との付き合いをしようと思って乗馬の世界に入ってきた｣と言うものもよくある。そういう人の全部が途中で止めて行く。

　人の気持ちが分からないものに馬の気持ちが分かるはずがないのだ。

ＳＩＴＥＭＡＰ